会社の責任による労災について
- ○ 会社が就業環境に配慮していなかったために事故が起こった
- ○ 過労が原因で事故を起こし、重大な後遺障害が残ってしまった
- ○ 酷いパワハラ、セクハラ被害を受けてうつ病になり、働けなくなってしまった
- ○ 長時間労働により、過労死してしまった
1.会社に「安全配慮義務違反」があると会社に責任が発生する
「そもそも、労災が発生したときに会社の責任になる可能性があるのか?」と疑問に思う方がいるかもしれません。
会社の責任によって労災が発生するケースはあります。会社には労働者に対する「安全配慮義務」が認められるからです。
安全配慮義務とは、労働者に安全な就業環境を提供し、生命や身体の安全衛生に配慮しなければならない法的義務で、使用者と労働者の雇用契約にもとづいて発生します。
企業が安全配慮義務を怠って不適切な環境で就業させたために労災が起こったのであれば、企業側には「安全配慮義務違反」が成立して損害賠償責任を負います。
2.労災が会社の責任になる具体的なケース
以下のような場合には、労災が会社の責任になる可能性があります。
1か月に100時間、複数月に平均して80時間を超える長時間労働をさせていた
上記の基準は「過労死ライン」といわれるものです。このような長時間労働をさせていたために労働者が病気になってしまった場合、あるいは、過労死、過労自殺した場合には会社の責任になる可能性があります。
危険な環境で働く労働者に対し、安全装置などを提供していなかった
高所や坑内などの危険な場所で働く労働者には安全装置などの配慮が必要です。それがなかったために事故が発生したら会社の責任になる可能性があります。
極端な温度差がある、不衛生な環境、空気の悪い場所などで働く労働者に対し、必要な配慮をしていなかった
こういった通常の環境とは異なる労働者には、連続勤務時間を短くするなどの特別の配慮が必要です。配慮を怠ったために労災が発生した場合、会社の責任になる可能性があります。
パワハラやセクハラなどが発覚し、相談があっても放置していたために労働者がうつ病となった
職場内のハラスメント対策や労働者のメンタルヘルスの管理も会社にとって重要です。必要な対応をせずに労働者がうつ病になって働けなくなったり自殺したりしたら、会社の責任になる可能性があります。
3.会社へ請求できる賠償金の種類
労災が会社の責任となる場合に会社に請求できるのは、以下のような費目です。
治療関係費
病院で必要となる治療費を実費で請求できます。通院にかかる交通費、宿泊代、付添看護費用や入院雑費なども請求可能です。
休業損害
労働者が労災によって働けない期間が発生したら、その期間に対応する休業損害を請求できます。
慰謝料
労働者がけがや病気になり、入通院したら入通院に関する慰謝料が発生します。労働者に後遺障害が残ったら後遺障害慰謝料が認められます。労働者が死亡した場合には死亡慰謝料が発生し、会社にはそれぞれ請求できます。
逸失利益
労働者に後遺障害が残った場合、生涯にわたって得られる収入が低下するので「逸失利益」を請求できます。
死亡した場合にはその後一生収入を得られなくなるので、やはりその分の「逸失利益」を請求できます。
介護費用
労災によって労働者に後遺障害が残り、介護が必要になったら介護費用を請求できます。
器具・装具の費用
労働者に後遺障害が残り、義手や義眼、コンタクトレンズ、杖などの器具や装具類が必要となったら、そういったものの費用も会社へ請求できます。
自宅や車の改装費用
労働者に後遺障害が残り、生活するために家や車の改装が必要になる場合には、改装にかかる費用も請求可能です。
葬儀費用
労働者が死亡した場合、葬儀費用を会社に請求できます。
4.会社の損害賠償責任と労災保険の関係
労災が発生すると、労災保険からも給付金が支給されます。会社への損害賠償金と労災保険の給付金の関係はどうなるのでしょうか?
重複する部分についてはどちらか一方しか受け取れませんが、重複しない部分については労災保険とは別途会社へ請求可能です。
たとえば、治療費については労災保険から支給を受ければ会社に請求する必要は通常ありません。
しかし、休業損害については労災からは休業後4日目からしか支給されませんし、基礎賃金額の6割までしか支給されません(特別支給金を除く)。不足分については会社に請求可能です。
上記の損害賠償金のうち「慰謝料」は労災からは一切支給されないので、会社に全額請求できます。
葬儀費用についても労災給付では不足する部分について会社に請求できますし、自宅や車の改装費用などは労災保険から出ないので会社に請求します。
5. 会社に責任追及する手順
会社に責任が発生するケースでも、会社の方から責任を認めて必要な賠償金を払ってくれるケースばかりではありません。労働者の方から会社へ賠償金を請求する必要があり、以下のように賠償請求を進めることが考えられます。
5-1.会社に話し合いを持ちかける
まずは、会社に対し、適切な補償を希望する旨を伝え話し合いましょう。会社がきちんと対応して賠償金を払ってくれれば穏便に解決できます。
5-2.内容証明郵便で請求する
話し合いができない場合には、内容証明郵便を使って請求書を送ります。ご本人名義で送るよりも弁護士に依頼して弁護士名義で請求書を送ると、より強いインパクトを与えて支払いに応じさせやすくなる可能性があります。その後、会社と交渉を進めて賠償金の金額や支払い方法を取り決めます。
5-3.合意して合意書を作成する
話合いによって損害賠償の方法に合意ができたら、合意書を作成して支払いを受けます。
5-4.労働審判を起こす
会社が話合いに応じない場合や話し合っても合意できない場合には、労働審判を申し立てます。
労働審判では労働審判員を間に入れて話し合うことができ、合意できない場合には労働審判官が損害賠償義務の有無を判断し、会社の責任が認められれば支払い命令を出してくれます。
5-5.訴訟を起こす
労働審判の結果に不服があって解決できない場合には、裁判所で通常訴訟を提起します。
訴訟できちんと会社の法的義務を主張・立証できたら裁判所が会社に損害賠償金の支払い命令を下します。
こうして会社から必要な賠償金を受け取ることが可能となります。
会社の責任で労災が発生したら、まずは証拠を集め、会社に責任を認めてもらい、適切な損害賠償金を支払ってもらう必要があります。
ご本人だけで対応するのは困難で泣き寝入りのリスクもあります。山口で労災に遭ってお困りであれば、お早めに弁護士までご相談ください。
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