【労災事故】熱中症、高温・低温物との接触事故の多い業種と具体的事例の紹介
労災事故では熱中症を始めとして「高温や低温物との接触」を原因とするものが多数発生しています。
特に建設業、飲食業や小売業、製造業、警備業などの業種でこの類型における事故が多くなっているので注意が必要です。
今回は高温や低温物との接触による労災事故の件数や多い業種について、具体的な事例も交えながら山口の弁護士が解説します。
1.高温・低温物との接触事故の件数
高温や低温物との接触事故とは、加熱された道具や製造物、冷却されたものなどに身体が接触して死傷する労災事故です。熱中症もこの類型に含まれます。
「平成30年労働災害発生状況の分析」という厚生労働省の資料によると、平成30年におけるすべての労災事故の発生件数は127,329件で、死亡事故の発生件数は909件。
そのうち高温や低温物との接触による労災事故は3,546件となっており、全体の2.8%程度です。
高温や低温物との接触による死亡事故の件数は36件で、死亡事故全体の4%弱です。
2.高温・低温物との接触事故が多い業種
高温や低温物との接触による労災事故が頻発する業種を件数の多い順からご紹介します。
1位 製造業
平成30年にもっともこの類型による労災事故の件数が多かったのは、製造業です。工場等における作業中に熱いものや冷たいものに触れる機会が多いことが影響しています。 全体件数3,546件のうち983件が製造業で発生しており、全体件数の27%以上が製造業におけるものとなっています。2位 飲食業
2番目に多かったのが飲食業です。飲食業ではできたての熱い料理を運んだり調理したりする機会があり、やけどする機会が多くなっていることが影響しています。 平成30年における飲食業での高温・低温物による接触事故の件数は762件でした。3位 小売業
3番目に多かったのは小売業です。平成30年における事故の発生件数は380件でした。4位 建設業
建設業では野外作業が多いため、熱中症を始めとして高温・低温物との接触事故が多く発生しています。平成30年における発生件数は340件でした。5位 陸上貨物運送業
5番目は陸上貨物運送業です。熱中症のリスクが高く、取扱い荷物にも熱いものや冷たいものが含まれることなどが影響しています。平成30年における発生件数は221件でした。3.高温・低温物との接触で死亡事故が多い業種
熱中症、高温や低温物との接触で被災者が死亡しやすいのは、以下のような業種です。
1位 建設業
死亡事故がもっとも多かったのは建設業です。死亡事故の件数が36件であった中、建設業では11件が発生しており割合にすると30%以上となります。建設業で1日野外で作業する方は熱中症などの労災事故に注意が必要です。2位 製造業
2番目に死亡者数が多かったのは製造業です。平成30年には8名の方が高温物・低温物との接触事故によって死亡しています。3位 陸上貨物運送業
3番目に死亡者数が多かった業種は陸上貨物運送業です。平成30年には7名がこの類型の労災事故により命を落とされています。4位 警備業
4番目に死亡事故が多かったのは警備業です。警備業でも熱中症のリスクが高くなっています。平成30年には4名の死者が出ています。5位 小売業と農業・畜産・水産業
「小売業」と「農業・畜産・水産業」ではそれぞれ1名ずつ高温・低温物との接触によって死亡者が出ています。4.高温・低温物との接触事故の具体例
高温や低温物との接触事故の具体例には以下のようなケースがあります。
4-1.製造業
被災者は缶内で反応させて物質を抽出する作業を行っていました。抽出液を抜き出そうとしましたが、詰まりが発生して流れてこなかったので缶内を確認するためにマンホールを開け、缶内の状況を見ようとしました。そのとき別の作業員が缶の下側から不活性ガスを使って詰まりを除去するためのフラッシング作業にかかってしまったため、缶内で加熱されていた抽出液がマンホールから噴き出して被災者の両足に降りかかりました。
被災者は足首をやけどしました。
4-2.建設業
化学プラント解体工事において、被災者がプラントの配管を切っている最中に発生した労災事故です。
作業員は3名で高所作業車やローリングタワーを使ってプラントの配管をガス溶断によって解体する作業をしていました。すると突然「ドーン」という音とともに、配管の下にあったピットから炎が出て、上方にて作業を行っていた3名がやけどしました。
現場では配管内に引火性が高いトルエンが残留している可能性があるにもかかわらず、作業方法が事前に検討されず、作業員らへの安全衛生教育も行われていませんでした。発注業者もタンクに貯蔵していたトルエンの危険性や有害性について、情報提供していませんでした。
4-3.飲食業
被災者はレストランの調理場で調理をしていましたが、フライパン内の油に引火して炎が上がったために、慌てて水が溜まっていたシンク内へ高温の油を放ちました。すると油によってシンク内の水が急沸騰して高温の蒸気が多量に発生し、被災者の身体に降り注ぎました。被災者は右手の指から肘付近までをやけどしました。
4-4.運送業
「雪のせいで車が立ち往生した」という救援要請を受け、被災者らは3名で救護車両に乗って現場へ向かいました。しかしその救援車両も雪で動けなくなり、被災者らを救出に向かった除雪車もまた雪で動けなくなってしまったので、被災者らは車両から降りて徒歩で除雪車へと向かいました。
雪がひどく徒歩ではとうていたどりつけなかったので途中であきらめて引き返そうとしましたが、被災者は冷気と体力の限界によって自力歩行が困難となりました。やがて低体温症によって死亡に至りました。
4-5.運送業
被災者は、倉庫内でトラックのパレットから荷物を下ろす作業を行っていましたが、熱中症にかかり、歩行不能となりました。病院へ運ばれましたが多臓器不全によって死亡しました。被災者は当時、体調不良による休職から復帰したばかりでした。
4-6.建設業
被災者は、朝から木造家屋の建築工事現場で基礎の加工や組み立て作業を行っていました。
夕方の休憩時、異常を感じたので頭に水をかけて冷やしましたが、ろれつが回らなくなって痙攣を起こしました。周囲の作業員が救急車を呼んで病院へ搬送しましたが、熱射病による多臓器不全により死に至りました。
4-7.警備業
交通警備員が道路補修工事現場で交通誘導業務を行っていましたが、午後になって休憩をとろうとしたところ、嘔吐して意識不明の状態に陥りました。被災者は熱中症にかかっており、そのまま回復せず死に至りました。
高温・低温物との接触による事故では、工場内の作業などだけではなく熱中症による死亡事故が多いので野外で長時間作業される方は特に注意が必要です。労災事故に遭われましたら、適切な補償を受けるために山口の弁護士までご相談下さい。
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