林業の労災事故発生状況と労災対策について
林業では毎年労災事故による死亡者が多数発生し続けている業種です。全体的な労災件数も比較的多いので、携わる労働者の方は事故に遭わないように充分な対策が必要といえます。
今回は林業でどの程度労災事故が発生しているのか、どういった類型の労災事故が多いのかなど、労災サポートへ積極的に取り組んでいる山口の弁護士が解説します。
1.林業の全体的な労災事故発生状況
林業ではどの程度の労災事故が発生しているのか、全体的な件数と死亡事故にわけてみてみましょう。
1-1.労災事故全体の発生件数
林業の労災発生状況については、厚生労働省の「平成30年労働災害発生状況の分析等」により明らかにされています。
これによると、平成30年における林業全体の労災事故の発生件数は1,342件です。すべての業種の労災事故の全体件数は127,329件なので、林業の占める割合は多いようにはみえません。
ただし林業に携わる母体人数がさほど多くないため1,342件とう発生件数は決して少ない数字とはいえません。
1-2.林業における労災事故発生件数の推移
林業単体でみると、労災事故の発生件数は全体的に減少傾向にあります。
平成26年には1,611件、平成27年には1,619件の労災事故が発生しましたが、平成28年には1,561件に減少し、平成29年には1,314件にまで減りました。平成30年には1,342件となって前年より28名増加していますが(割合にすると2.1%の増加率)、以前の水準と比べると低下基調にあるといえるでしょう。
1-3.林業における労災死亡事故の発生件数推移
林業では労災による死亡事故の発生件数が比較的多くなっており、平成30年には31名が労災事故によって命を失いました。
ただし従前と比べると減少傾向にあります。ここ5年間の推移では、平成26年には労災による死亡者数が42名だったのが平成27年には38名となり、平成28年には41名、平成29年には40名となっています。つまり近年では「40名前後」の死亡者が出ていた状況です。
一方平成30年には一気に9件減少して死亡者数が31名となり、割合的には22.5%の減少となっています。
2.林業で労災事故の多い類型
2-1.死亡事故の多い類型
林業で労災による死亡事故が多いのは、以下のような類型の事故です。
1位 激突される事故
もっとも多いのは機械などに激突される事故です。31名の死亡者のうち12名が激突によって死亡しています。2位 墜落・転落による事故
2番目に多いのは墜落や転落による死亡事故です。31名中6名が墜落や転落により命を落としています。3位 飛来物・落下物による事故
飛来物や落下物が当たって死亡する事例も多数あります。伐木の破片等が当たるケースも多いと考えられます。平成30年には5件の死亡事故が発生しています。4位 崩壊・倒壊による事故
足場の崩壊や倒壊などによる事故です。平成30年には4名が死亡しています。5位 はさまれ・まきこまれによる事故
チェーンソーなどの機械などにはさまれたり巻き込まれたりする死亡事故です。平成30年には1名が死亡しています。3.林業で負傷事故の多い類型
負傷者の多い類型の労災事故は以下の通りです(死亡者を含む)。
1位 激突される事故
林業では激突されたことによって生じる労災事故が多数です。1,342件中247件はこの類型の事故です。2位 切れやこすれによる事故
身体が切れたりこすれたりして負傷するケースも多数発生しています。平成30年の発生件数は237件です。3位 飛来物・落下物による事故
飛来物や落下物が当たってけがをされるケースです。平成30年における飛来物や落下物による労災事故発生件数は224件です。4位 墜落・転落による事故
墜落・転落によって負傷する林業労働者の方も多数おられます。平成30年には174件の労災事故が発生しています。5位 転倒による事故
転倒によって負傷するケースは、平成30年には160件発生しています。4.林業の労災対策
林業では労災による死亡事故が比較的多いことから、近年労働環境改善のための施策が進められています。
中でも死亡事故が特に多いとされる「伐木作業」における安全対策を強化するため、平成31年2月に労働安全衛生規則等が改正されました。
改正内容のうち重要なものを挙げると以下の通りです。
- ● 伐木作業において「受け口」を作らなければならない水準が引き上げられます。これまでは胸高直径が 40cm 以上のものを伐採するときに受け口を要求されていましたが、法改正後は 20cm 以上の木を切る際に受け口が必要となり、範囲が拡大されます。
- ● 伐採中に近くに立ち入ることのできる労働者が制限されます。法改正後は、伐採中の立木の高さの2倍を半径とする同心円内に別の労働者が立ち入ることが禁止され、巻き込まれる事故を減らそうとしています。
- ● チェーンソーによって伐木作業などを行う労働者には、脚を保護するための切創防護用保護衣を着用させる必要があります。
- ● かかり木の処理中に、かかられている木の伐倒や浴びせ倒しを禁止します。
山口でも林業に携わっている方が多数おられます。労災事故に遭ってしまった場合には弁護士に依頼して、適切な方法で労災保険の申請や会社への補償請求の交渉等の手続きを進めましょう。お困りの際にはぜひ、山口の弁護士までご相談下さい。
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