【労災事故】有害物との接触による事故の件数、多い業種や具体例の紹介
毒物や危険物などを取り扱っている労働者の方は、そうした有害物と接触することによって死傷する可能性があるので、日々の業務で注意が必要です。
今回は有害物との接触による労災事故の件数や発生しやすい業種、具体例を山口の弁護士が紹介します。
1.有害物との接触による労災事故の件数
有害物との接触による労災事故とは、化学物質や一酸化炭素などの有毒ガスなどに接触することにより作業員が死傷する事故です。
厚生労働省の資料(平成30年労働災害発生状況の分析)によると、平成30年における労災事故の全体件数は127,329件、うち死亡事故の件数は909件でした。
そのうち有害物との接触による労災死傷事故の件数は537件、死亡事故は17件です。
件数的には多くはありませんが、危険度が高いので注意が必要な類型の事故です。
2.有害物との接触による労災事故が多い業種
有害物との接触による労災事故が頻繁に発生するのはどういった業種なのか、多い順にみていきましょう。
1位 製造業
平成30年にこの類型による労災事故がもっとも多かったのは製造業です。工場等での作業中に有害物質やガスに触れる機会が多いことが影響しています。有害物質との接触による労災事故の全体件数が537件のうち、製造業で232件が発生しています。全体の43%以上が製造業で発生している状況です。2位 建設業
2番目に多かったのは建設業です。建設現場にて有害物質を扱うケースが多いためです。平成30年には91件の事故が発生しています。3位 清掃、と畜業
3番目に多かったのは清掃やと畜業です。平成30年には44件の労災事故が発生しています。4位 飲食業
飲食業でも有害物質に触れる機会が多いので注意が必要です。平成30年には23件の事故が発生しています。5位 小売業
小売業では平成30年に21件の労災事故が起こっています。6位 社会福祉施設
社会福祉施設でも職員が有害な化学物質等に触れる機会があります。平成30年には20件の事故が発生しています。3.有害物との接触による労災死亡事故が多い業種
有害物との接触によって労働者が死亡する事故が多い業種をご紹介します。
1位 製造業
平成30年、圧倒的に死亡事故が多かったのは製造業です。有害物との接触による死亡事故の全件数が17件であった中、製造業では12件が発生しており70%以上が製造業で発生している状況です。2位 清掃、と畜業
2番目に死亡事故が多かったのは清掃、と畜業です。日頃から人体に悪影響を及ぼす物質を取り扱う方は注意が必要です。平成30年には2名が命を落としました。3位 建設業、商業、保健衛生業
3番目に死亡事故の多いのは建設業、商業、保健衛生業です。平成30年にはそれぞれ1名ずつ死者が発生しています。4.有害物との接触による労災事故の具体例
有害物質との接触による労災事故には以下のようなケースがあります。
4-1.製造業
食品加工施設において10名の労働者が魚介類の加工作業をしていた際に発生した労災事故です。現場では食品や器具等を殺菌消毒するため、次亜塩素酸ナトリウムと希塩酸を水で薄めた消毒殺菌用水溶液が使用されていました。労働者らはこの消毒殺菌用水溶液の影響でめまいや吐き気等の異常を訴え、1名は1日入院治療を受けました。
4-2.製造業
ウレタン原料混合タンク内の壁面を清掃していた作業員が被災した労災死亡事故です。
作業員はタンク内の洗浄液(ジクロロメタン)を抜いた状態でタンク内に入って壁面を掃除していましたが、肺水腫を発症してタンク内で倒れ死亡しました。当時作業員の防毒マスクは外れていました。解剖の結果、死因はジクロロメタンによる中毒死であると判明しました。
4-3.製造業
高炉に微粉炭を吹き込む装置の配管に詰まりが生じたため、作業員がトラブルシューティングを行っていた際に発生した労災事故です。
高炉の羽口からは一酸化炭素が拡散されており、希釈するために送風機も設置されていましたが、不十分な状態でした。被災者は2名で作業を行っていましたが、体調が悪くなってしゃがみこみ、救急搬送された先の病院で一酸化炭素中毒と診断されました。当時、2名の作業員は送気マスクを着用していませんでした。
4-4.製造業
アンモニア水タンクの弁を閉止する作業を行っていた際に発生した労災事故です。
1名の作業員がステムを回した際にバルブのふたが壊れて中のアンモニア水(濃度約25%)が噴き出しました。アンモニア水は2名の作業員に降りかかり、うち1名は意識を失って倒れ、5日後に死亡に至りました。1名は脱出して軽傷を負い、救助にあたった1名も軽傷を負いました。後日調査の結果、バルブ内は腐食していたことが判明しました。
4-5.製造業
自動車部品の塗装作業中に発生した労災事故です。被災者が1-ブロモプロパンという有害物質を含む洗浄液を使って塗装に使う道具を洗浄していた際、吐き気をもよおしました。病院を受診したところ「有機溶剤中毒」と診断されました。現場には排気装置が設置されていない状況でした。
4-6.建設業
複数の作業員がコンクリート床スラブの切断と破砕作業を行っていましたが、1名が倒れ5名が体調不良を訴えました。現場では一酸化炭素が発生する危険性がありましたが、作業員らは呼吸保護具をつけていませんでした。また現場にはポータブル送風機と扇風機が置いてあるだけでそれ以上に充分な対策がとられていませんでした。
4-7.建設業
導水トンネルの補修工事中、坑内でガソリンエンジンの発電機を使ってトンネルの壁にドリルで穴を空ける作業をしていた4名の作業員が一酸化炭素中毒となった労災事故です。トンネル下部には水が流れていたため、1名は一酸化炭素中毒となり水に落ちて溺死しました。他の3名も一酸化炭素中毒の症状で休職しました。
4-8.保健衛生業
クリニック内で医療用器具の滅菌処理中に発生した労災事故です。クリニックではエチレンオキシドという化学物質を使った滅菌器で滅菌処理が行われていましたが、滅菌器からエチレンオキシドが漏れ出し、1名の従業員が目の痛み等の異常を訴え、3名の従業員が嘔吐し中毒症状となりました。
4-9.接客業
日帰り温泉の施設内に入り込んだ猫を救出するため、被災者が岩風呂の遺構内部に入りました。遺構の底に横たわっていた猫を抱いて入口の方向へ戻ろうとしたとき、被災者は苦しみだして倒れ、翌日に低酸素脳症によって死亡しました。
身近に有害物質がある中で作業をされている方は、労災事故の予防に努めましょう。万一事故に遭ったら適正な補償を受けるため、山口の弁護士までご相談下さい。
労働問題のポイント
労働災害について
ケース別の労災
その他の労働問題
事務所情報
会社概要
弁護士法人牛見総合法律事務所
〒753-0074
山口県山口市中央5丁目2-34
セントラルビル5階
TEL 083−921−6377
FAX 083−921−6378
〒753-0074
山口県山口市中央5丁目2-34
セントラルビル5階
TEL 083−921−6377
FAX 083−921−6378
対応エリア
山口県全域
山口市、宇部市、防府市、萩市、下松市、岩国市、光市、長門市、下関市、 柳井市、美祢市、周南市、山陽小野田市、大島郡、玖珂郡、熊毛郡、阿武郡、その他 (出張相談・県外については応相談)
山口市、宇部市、防府市、萩市、下松市、岩国市、光市、長門市、下関市、 柳井市、美祢市、周南市、山陽小野田市、大島郡、玖珂郡、熊毛郡、阿武郡、その他 (出張相談・県外については応相談)